地方自治体の基幹業務システムの統一・標準化の取組について、今後の作業方針を関係府省と共有するため、令和3年9月22日にデジタル審議官を議長とする「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化に関する関係府省会議」が開催されました。 その内容を含め、本政策「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化」の取り組み状況を共有するデジタル庁のウェブサイトが公開されました。こちらを参照ください。
月: 2021年9月
英語版サイトを立ち上げました
2021年9月1日に発足したデジタル庁への応援メッセージの第3弾として、「デジタルガバナンスやデジタル能力の成熟度」について想いを語ります。こちらをご覧ください。
デジタル庁発足
デジタル庁が発足した。政府のデジタル能力をデジタル庁に集約し、民間企業からデジタル人材が大量に参画し、政府のデジタル能力を積極的に集中化している。
これは、新技術やイノベーションを積極的に取り入れ、また、多大な経費が必要となるシステムの投資対効果を追求しつつ、目的であるデジタル社会形成価値を創出するためには、必須な対応である。
成果を期待するには時期尚早ではあるが、デジタル大臣の監督の下、デジタル監のリーダーシップによる積極的な業務執行に依るところが大きいであろう。果敢なチャレンジを大いに期待したい。
デジタル能力の集中化、そして、行政第一線への浸透化へ
デジタル庁によるデジタル能力の集中化については、当面目指す姿としては正しいであろう。この取り組みにしっかり、確実に対応することが何より重要である。
しかしながら、これが最終目標ではないと考えるべきである。真のデジタル社会形成価値を持続的に創出し続けるためには、それらのデジタル化政策の実行主体である行政の第一線、すなわち、各府省の政策を立案し、制度を企画し、業務を実施する業務部門がデジタル能力を自ら獲得・保有して、国民等ステークホルダーへの行政価値創出に向けて、果敢にスピード感を持って推進することが求められる。
すなわち、デジタル社会形成価値創出に向けた、デジタル組織の集中化によるロケットスタートをひとまず実現し、さらにその先にある、デジタル能力が行政の第一線で当たり前のように発揮されている埋込(Embedded)型へと必然的に流れていくであろう。
グローバルなデジタル組織の成熟度モデル
グローバルビジネスの世界において、組織がデジタル能力を獲得し、最大限のデジタル価値を創出するようになるまでには、その組織の構造の成長過程について、自然な進化、成熟モデルが論議されてきた。
会社組織を起こし、事業が成長軌道に乗り始めるまでは、デジタル能力が企業の主要な事業を推進する業務部門(BU: Business Unit)に分散されていて、部門間の連携がないサイロ化された状態から始まるのが一般的である。
そこから、事業のスケールが拡大し、また、複数の事業を立ち上げるなど、成長軌道に乗せるために、必然的にデジタル化のスケールも拡大し、デジタル能力の拡大とともにデジタル能力を貴重な経営資源として適切な優先順位付け等最大限活用できるように、効率性を主眼にデジタル能力をデジタル化推進部門(IU: Innovation Unit)に集中させることになる。
さらに、顧客ニーズにタイムリーに対応し企業の価値を創出していくために、デジタル化推進部門はベストプラクティスを提供するセンターオブエクセレンス(CoE)機能を持ち、標準化調整機能を発揮するようになり、デジタル能力の発揮はビジネスの第一線が主体的に推進するような埋込型へと進化していく。
結論
デジタル庁の発足趣旨に沿って、政府はデジタル能力をデジタル庁に集中化してデジタル社会形成価値を早急に創出させるべきである。さらに、その先には、よりタイムリーに持続性をもって価値を創出し続けるため、デジタル能力を行政第一線の各府省へ浸透させ、デジタル庁はセンターオブエクセレンスの役割を担うように進化し成熟していくであろう。
ご参考:筆者が作成したガバナンス成熟度モデルの概要と事例情報を提供する資料を以下に添付致します。
2021年9月1日にデジタル庁が発足しました。デジタル庁の応援メッセージ第2弾として、モニタリング態勢の整備に関する提言を所長ブログに掲載しました。こちらをご覧ください。
発足したデジタル庁の目標としている行政のデジタル化は、2001年のe-Japan戦略を経て、2006年のIT新改革戦略、2013年の世界最先端IT国家創造宣言、2018年からのデジタル・ガバメント実行計画など、ここ20年来の取組みである。
戦略や実行計画の一部は目標を達成して成果を得ている一方で、多くは失敗しては新たな戦略計画を設定する繰り返しであるとの指摘は否めない。
今回、「だれ一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を目指し、大胆かつ迅速に、また継続的にデジタル改革を推進するとのデジタル大臣のメッセージが発出された。新生デジタル庁の大志が実現されることを大いに期待したい。
ただ、ふと思うのは、これまでの「失敗と新戦略」の繰り返しの歴史と何が異なるのかである。今回も同じ「失敗と新戦略」を繰り返すことが図らずも予想されてしまう。
今度こそ成功させるために必要なのは何か。それは、PDCA改善サイクルによる失敗から学ぶ謙虚な姿勢であろう。
デジタル・ガバメントの業務遂行状況を振り返り、現場レベルでは、成功プロジェクトは何が良かったのか、失敗したプロジェクトは何が問題だったのか、導入後レビューをしっかり行うことである。また、幹部レベルでは、設定したデジタル戦略や実行計画について、実現した項目や実現できなかった項目についてしっかりと振り返り、その成功要因や課題を認識することだと思う。
失敗した項目については、その原因について「なぜ」の繰り返しによる真因へ深掘り(評価)を行い、その真因を取り除く対応策を考え、次なる戦略計画やプロジェクト計画に反映するという再発防止の対応が極めて重要である。これまでの失敗を失敗として正しく認識し、それらをしっかり反省し、次の成功に繋げる努力に向ける必要があるのではないか。
このように、新しいデジタル監が中心となって、「戦略策定、実行、振り返り、改善」というマネジメントのPDCA改善サイクルを効果的に回していくことがデジタル庁の最重要課題であろう。
また、デジタル大臣等のリーダーシップにより、国民等ステークホルダーのニーズを評価して、デジタル監等事務方へ進むべき方向性を示し、デジタル監、事務方の業務遂行をモニタリングするという、ガバナンスに関する「評価、方向付け、モニタリング」の価値創出サイクルの実践も重要である。特にモニタリングの結果をしっかりと国民等ステークホルダーと共有する透明性の発揮がデジタル庁の成功には欠かせない。